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最高裁判所第二小法廷 昭和23年(れ)1594号 判決 1949年3月05日

主文

本件上告を棄却する。

理由

辯護人岸達也、同神谷健夫、同佐藤利雄上告趣意第一點について。

按ずるに、原審は所論の竊盗の事実は之を認定していないのである。而して假に被告人の本件麻藥の所持が、所論のように竊盗に因ったものであったとしても、竊盗爾後の財物の所持が、更に他の法益を侵害する場合は、竊盗罪の外に更に其の他の罪を構成するものであることは當然のことと謂わねばならぬ。そこで本件は麻藥を所持すること自體が本件犯罪を構成するものであるから、通常竊盗爾後の財物の所持が他の法益を侵さない結果、更に他罪を構成しない場合とは異なるのである。論旨は理由がない。

同第三點について。

情状に關する證人喚問の申請は、假令辯護人側の證據申請としてそれが唯一のものであったとしても、之が申請を採用するか否かは原審裁判所の専權に屬する所であって、從って之が申請を採用しなかったとしても所論のように辯護權を不法に制限したものとは謂うを得ない。(中略)論旨は何れもその理由がない。(その他の判決理由は省略する。)

以上の理由に依り刑訴施行法第二條舊刑訴第四四六條に從い主文のとおり判決する。

此判決は裁判官全員一致の意見である。

(裁判長裁判官 霜山精一 裁判官 栗山 茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎)

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